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令和6年度ワーキンググループ第2回を実施。新産業づくりへの解像度を高める。

「長野における未来の移動 – 持続的なまちづくりのための人・物・移動を考えよう」をテーマに始動した令和6年度NASCワーキンググループ。

今回は、全5日程のうち2024年8月28日に開催された第2回目の様子をお届けします。


人流データを活用したまちづくりのあり方


会場は、長野市内の複合施設「R-DEPOT」。第1回目終了後、メッセージングアプリSlack上でコミュニケーションを取りながらディスカッションを重ねていた参加者たち。そのようなプロセスを踏まえて、チェックインでは「第1回目終了後からの約1ヶ月間で生まれた小さな気づきや発見」について、一人ひとりシェアしていきました。



「お盆期間、東京と長野を往復していてCO2の排出が気になりました」

「先日、テレビを見ていたら小さな島の中で、電動キックボードに乗っている人が出ていて、素敵な光景だと思いました」など、それぞれの視点を共有していきました。


その後、インプットトークへ。

登壇したのは、地域の脱炭素化の推進や人流データをもとにしたまちづくりなどに取り組んできた環境省環境計画室計画官 黒部一隆氏。「移動・データによるまちづくり」というテーマで、人流データの活用について話しました。



環境の観点から見ても「移動」は重要なテーマ。脱炭素を推進するには、移動に伴うCO2排出を削減する必要があります。「そのためのアプローチは、クルマの電動化や徒歩・公共交通への転換の2つ」と語る黒田氏。そうしたまちの動きを設計していく観点から、自治体に出向した際の取り組みについて紹介しました。


「まず考えたのが、携帯電話の位置情報と加速度センサーのデータを用いて個々人の移動手段を見える化することです。たとえば、時速4kmほどで移動していたら徒歩、時速10kmほどだったら自転車、時速30kmを超えていたらクルマなど、位置情報と加速度センサーを用いれば、誰が・どこで・どんな移動手段を使用しているのか、推定できる。それが実現できれば、環境負荷の少ない移動をしている人にポイントを付与して、より環境負荷を下げる移動手段を奨励したり、人流の変化を継続的に捉えた上で最適な施策へと反映できます」



実際に参加者たちも人流データの観察ツールを体感してみることに。まちの動きを見える化するとはどういうことか。そのイメージを掴みました。



その後、黒田氏は、人流データを取得する技術やポイント、データをまちづくりに活用している先進地域の事例などを紹介。その中で、人流データを見える化する意義についても語りました。


「人流データを分析することで、どのエリアにどこから人がやってきて滞在している状態=賑わいが生まれているのか。イベントで集客効果はあったのか、ちゃんと地域を回遊してくれているのか、といったことも分かります。それらはみんなにとって好ましい街をつくっていく際に、価値のある視点をもたらしてくれます。ただ、あくまでデータは『食材』。適切に仮説を立てて、分析する『レシピ』をつくれる人が重要です」



長野県が取り組む“エアモビリティ”の可能性


お昼を挟んだのち、午後は長野県企画振興部DX推進課の清水政善氏より「長野県での空モビリティ×山岳高原イノベーション創出の取組」と題したプログラムからスタート。

ドローンをはじめとした次世代の空モビリティに関する業界トレンドや長野県の取組について紹介しました。



「規制緩和や技術の発展が進んだ今、環境負荷やコストの観点からも、飛行機やヘリコプターよりもCO2排出量が低く、運航コストも抑えられる“次世代エアモビリティ(ドローンや空飛ぶクルマ※)”の検討が進んでいます。空を使うことが今までよりも身近になることで、新しい人やモノの流れが発生して、まちづくりのあり方が変わっていくはずです」


※空飛ぶクルマ:電動、垂直離着陸、(将来的に)自動運転可能という3つの要件を満たす新しい航空機。ドローン技術を応用し、ヘリコプターよりも安く、エコで、静かに飛ばすことが可能と言われている。

そして、人の移動や物流、そして災害時の支援など、さまざまなシーンで活用できる可能性を話しました。「長野県としても、官民連携しながら空域活用やまちづくりを考えていきたいと思っています」


セッション終盤の質疑応答では、関心を持った参加者たちから多くの質問が挙がりました。



「なぜ」を繰り返し、目の前の事象に隠された本質に辿り着く


続いて、SUNDRED株式会社深田による「都市デザインのグローバルトレンドとシステム思考」のプログラムに。



まずは世界各地の先進地域の事例を踏まえながら、都市デザインのグローバルトレンドを紹介しました。

たとえば、自転車インフラの整備と公共交通機関の連携による持続可能な都市交通システムを確立したアメリカのポートランドや、MaaSアプリの導入により1つのプラットフォームで全ての移動手段を利用できるシステムを構築したフィンランドのヘルシンキなど。サスティナブルな移動手段やデジタル技術の導入によって生まれた好事例を挙げていきます。


「人流データの活用の話もありましたが、データを得たら市民と一緒にアイデアを作ることが大切です。アイデアがかたちになるまでのプロセスを共有することで市民の人たちが受け入れやすくなるんですよね。NASCがさまざまなセクターの方を巻き込みながら取り組んでいるのも、そういった理由です」


まちづくりのエッセンスを吸収しようと、参加者たちは真剣に耳を傾けます。



その後、システム思考の解説へ。


「ところで、『システム』とは一体なんだと思いますか?」


そんな問いかけから、解説がスタート。「『システム』とは、複数の構成要素が相互作用しながら、全体としてまとまった機能を果たすもの。決まった正解があるような問題ではなく、ゼロから課題を設定し、自ら正解をつくっていかなければならない『やっかいな』問題を扱う場合には必要な考え方」と話します。


そして、システム思考を助けてくれるツールである「氷山モデル」を解説。



「目の前にある事象の要因を繰り返して問うことにより、根本にある前提を明らかにしてほしい。そのためには『Why?』を繰り返すことが大切です」。


「なぜお盆休み・年末年始は高速道路が渋滞するのか?」といった身近な疑問を取り上げながら「なぜ」を繰り返すミニワークをグループで実施して、グループごとに発表しました。


プログラムを踏まえた事業構想のブラッシュアップを


続いてグループごとに事業構想を1枚のシートにまとめることに。第1回目終了後に宿題として出されていたサマリーシートをもとに、今回のプログラムを経てブラッシュアップしていきます。


「誰の・どんな課題に対して取り組むのか。もっと具体的に考えていきましょう」。


そうして、チームごとディスカッションを重ねていきました。



「私たちが設定した、このターゲットは一体何を不便に感じているんだろう?」

「このトピックに関して言うと、先日私の知り合いでこんな事例がありました」


など、チームごとに想像を働かせたり、身近な経験を振り返ったりして、課題についての解像度を高めていきました。



今回の取組を振り返るクロージング後も、熱量冷めやらぬまま会場に残ってディスカッションを続けるグループも。



第2回目も大いに盛り上がったNASCワーキンググループ。第3回目は9月18日を予定。ここからどのような事業が生まれるか、どうぞご期待ください。

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